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廃校

20世紀も終わりに近づいたころ、鉄道関係の書籍に、ひとつのブームが生まれていた。それが「廃線跡紀行もの」だった。 廃線に関する項で述べたけれど、私はこのブームを割と冷めた目で見ていた。そして案の定、私の廃線めぐりの気持ちも冷めていったのだ。

そんな最中、古くからいっしょに廃線めぐりをしていたK野くんから、「最近こんなのに注目していてさ。」と話を持ちかけられた。それが「廃校」めぐりだった。

確かにそれ以前にもいくつかの廃校を訪れたことがあった。そしてそのあまりの衝撃にしばし言葉を失った。形は違えど、必要とされる施設はほぼ同じ。ここが、放送室の跡か、ここが音楽室だな、図書館には本も残されている…。自分の小学生時代を思い出させる強烈な匂いがそこにはあった。

K野くんは精力的に調査した。地元である山梨県の学校について、仕事の特性も活かしさまざまな人から聞き込み、データに頼ることなく、ひとつの体系だった資料を完成させてしまっていた。私はそれをうらやましく見るのと同時に、彼につれられて訪れる廃校の魅力にとりつかれていった。

ただ、廃校と廃線跡では、趣が違う部分がある。どうしても廃校には、強い磁場のような「思い出」が刻み込まれている。運良く残された校舎の中にはそこに暮らしていた児童・生徒たちの思いが、ずっしりと染み込んでいる。廃線だってそうだとも思うが、小学生という一時期に集中的に刻み込まれた「思い」はかなり大きい。

ここで紹介する廃校については、詳しい場所などは記さない。問い合わせにも基本的には応じかねる。荒らすようなことをする人がわざわざ調べてまで訪れるとは思わない。私たちと同じように、卒業生の気持ちを大切にするつもりがある人ならば、きっと導かれると思う。

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